米国歯科医師国家試験情報ー臨床試験編
こんにちは
すでに受け終わって時間が経ち、かなり忘れはじめているのですが、完全に忘れ去る前に備忘録を書いておこうと思います。
このブログを見てくれている方の大きな関心でもあると思いますが、ひさしぶりにアメリカの歯科医師国家試験情報です。
今日は臨床試験についてお話します。
国家試験、日本では筆記一本ですが、アメリカでは実技があります。
(日本も40年くらい前はあったようですね)
どんな試験かというと、、、
実は、臨床試験と名のつくものが何種類かあって、自分が働きたい州で認められている試験を選んで申し込む形です。
なんだそりゃ。。。
統一してくれよ。。。
私が受けた試験は、WREBと呼ばれるもので、アメリカの州のほとんどをカバーしています。東海岸の一部の州では使えませんが、西海岸側に住んでいる私としては、WREBはかなり使える試験です。(そのほかにもADEX, CITAなど色々な試験があります)
そして、同じWREBを選んだとしても、受ける科目が異なることがあります。
例えば、私はもう面倒なのでフルセットで受けてしまえ!と深く考えずに一気に全教科(保存、歯内、歯周、補綴)受けましたが、カリフォルニアの免許はWREB試験の中でも補綴の科目はいりません。
しかし同じ西海岸でも、例えばシアトル(ワシントン州)で働きたいなら、WREBの補綴も合格していないと申請できない、などといった感じです。
自分の興味のある州のボードのサイトになんの試験のなんの科目をパスしていることが必要なのかが書いてあるので、受験申し込みの前にチェックしましょう。
一応、試験に関しては守秘義務が発生するのでどこまでこのブログで書いていいか、という問題もあります。なので、一般的に受験者ガイドに書いてあることと、実際受けた感想をメインに、当たり障りなく、違反にならない程度に書いていこうと思います。
さて、まずは感想。
思ったより難関だった!!!汗
私、この試験完全になめてました。
落ちるわけなくね?
と。
そして、本番焦ることになります。笑
学生が受ける試験のレベルであることを考えると、歯科医師としてある程度経験のある自分にとってはかなり有利だと思っていました。
(自分が学生の頃いかに実習が下手くそだったかを思う出だすとさ。ね。。。笑)
練習なんて、いるー?くらいのつもりでいましたが、いります。
受験される方は存分に練習して受けてください。
少なくとも私のような、最後にタービン握ってから半年たつんだよなー、つわりで気持ち悪いし、うぷっ、という状態の方にはかなりきついです。(なんでこの状態で余裕と思っていたのか、今思うと自分が謎。笑)
というのも、臨床現場と試験は、全く別です。
そもそも、普段エナメル質を削り慣れている歯科医師にとって、模型の歯を削る感覚はまた違います。
骨より硬い歯の組織とひっかきゃ傷つくプラスチックですからね。それは違いますね。
また、採点の評価基準というものがしっかり決まっています。
例えば、エンドのRCFはオーバーになったらマックス5点のうち、3点しかもらえません。
私は0.2mmオーバーしてしまい、やっぱり3点でした。
さらに、CEJから少し下の部分が少し粗でした。デンタルで少し隙間が見えてしまった。
臨床的には、どうせコア建てる時にここ取るし、いいっしょ、と考えてしまいますが、試験ではもちろんダメ。上部だけ少しGP外して、ラテラルでRCFした後に上部だけバーティカルでし直しました。汗
臼歯のアクセスも髄角を取ろうと思って、慣れないユニットを使いこなせなかった私は、トルクとスピードの調整がうまくできず、ラウンドっでゴリゴリとしたら、あっという間に模型が削れてしまい、若干内部が丸くなる。(余分な象牙質(を想定する部位)が削られてしまったという評価で5点中3点。
3点取れれば合格なのですが、余裕で5点取れると信じていた私にとっては予想外でした(浅はかでした)。
このように、臨床経験からしてこんなもんでしょ、と思ってしまうと命取りです。
実際、試験に落ちるかたのほとんどは学生ではなく、臨床経験豊富な外国人ドクターたちだったようです。
中には母国で30年間エンドの専門医やってました、という方が、エンドで落ちていました。
私と同じように、なめていたのでしょうね。汗
物腰柔らかく、きっと普段は患者さんからの信用は厚い先生だと思います。
ということで、
これから受験される先生へ。
自分の臨床経験、臨床感覚はさておき、評価表の基準にぴったり合うような仕事ができるように練習してください!
って、こういってしまうと当たり前なんですけど、実際やってみると、自分は普段こうしてる、このほうがいいに決まってる、これくらいなら臨床で問題ない、というのがどうしても出てしまうこともあるんですよね…。
逆に言えば、その評価基準をしっかり理解し、それに合わせられれれば受かる試験です。
満点を取る必要はなく、3点で受かるので、練習をして臨めば絶対大丈夫です。
また、この試験のもっとも辛い点は、保存と歯周に関しては自分で患者さんを連れていかなければならないことです。
2020年に限って、COVID-19の影響で患者さんなしの変則的試験が行われているところが多いですが、これは異例です。
歯周は、歯石があり、ポケットの深い方を連れて行けばいいので比較的見つかりやすいのですが、みんなが苦労するのは保存です。
保存に関しては、基準にあったカリエスのある患者さんを自分で見つけて会場に連れて行くという作業が入ります。
日本で診療していれば、基準にあうようなカリエスなんていくらでも見つかりますが、外国で自分の自由に診療できるわけではない(まだ資格的に一般臨床ができない状態の人が受験する試験なので)中、その患者さんを見つけるのはかなり骨が折れます。
特に私なんて、ペイン専門。
歯に問題がある患者さんなんて、知り合うことがなかなか出来ません。
やっと見つけた患者さんも、みんな当日来てくれるかどうかドキドキ。
言い方が悪いですが、アメリカで見つかる患者さんの中には、日本人のように、約束したから時間どうりに来る、という感覚ではない人も多いです。
当日来てくれない患者さんに電話して、数百ドル(数万円)会場で払うから来てくれ、と再交渉をしたり、試験が始まり、治療が終わると試験官の評価を待たずに帰宅されてしまう方も過去にはいたとか。
うう、試験会場でそんなことが起こり得るなんて考えるだけで胃に穴が空く…
ということで、やっとそんなストレスフルな試験を終えることが出来て、合格した瞬間から、私はもう2020年をやりきった気分です。(早い。笑)
ということで、臨床試験のイメージが湧きましたでしょうか?
試験って情報戦のところがありますからね。
臨床試験に関しても同じです。
そのうち需要があれば私の過去の経験から、試験に来てくださる患者さんを見つける裏技(友人3人に試験に協力してくれる患者さんを紹介しました。)をお教えします。
(いや、裏技っていうような大層なものではないのですが。笑)
あ、ちなみにもう一つ。
この試験自体にかかった費用について。
試験代自体が3500ドル(ざっくり35万円)前後。
車(タクシーアプリ)で試験会場、練習場所に移動した費用、お世話になった方へのお礼(練習に診療室借りたり、道具を借りたり、日本から学生時代の実習道具を運んでもらったり)、自分で新しく買い揃えた道具代、練習用の模型の歯、などなどコミコミで日本円にして約45ー50万円、というところでしょうか…
そろそろアメリカで歯医者として働いて元を取らないと、瀕死です…
そんなわけで今日も雑書きでしたが、誰かの役に立つこともあるかも(ないかも)と信じて徒然なるままに書きました。
あくまでも個人の体験談なので、一つの参考にしてください。
ではでは、
Have a nice day!!